「 相続って、税金はいくら払うんですか?」
ある時、いきなり知り合いからこう聞かれました。
どうやらその人は、相続に係る税金は国民が同じ額を納める、と思っていたようです。
突然の質問にビックリしました。
相続というと、亡くなった方の
現金や預金、株式などの資産
借入金、未払いの医療費などの負債
を相続人が引き継ぐものですが、本来の相続は別の意味を持っていたのだ、と思ったことがあります。
十年以上前ですが、歌舞伎を観に行った時のことです。
その月は、ある役者の襲名披露が行われていました。
父親は高名な役者ですでに亡くなり、その名を息子が引き継ぐことになりました。
舞台では口上(こうじょう)が始まりました。口上とは舞台での挨拶のことです。
先に何人かの役者が襲名祝いの言葉を述べ、いよいよ本人の口上です。
その口上の中で
「〇代目○○を相続することに相成り・・・」
という表現がありました。
相続という言葉を歌舞伎の舞台で聞くとは思わなかったので、とても意外でした。
相続の意味を調べていくと、家の名前を継ぐこととありました。
金銭だけでなく、その家の歴史を物語る家名こそが財産という考えが古くからあったのだと思います。
特に歌舞伎のように、代々が家の芸を継ぎ、個人の技術を継ぐ場合、名前は家そのものを表し、大変重要な意味を持ちます。
歌舞伎が相続の語源を知る良い機会になりました。
ちなみに襲名は自分の祖父母や親、きょうだい等の親族、あるいは師匠の名を継ぐことを意味します。
11月、東京では江戸歌舞伎を代表する役者の舞台が始まりました。
9年前に亡くなった父親の名を継ぐお披露目興行です。
12月もその舞台は続いています。
大勢の人が待ちに待った舞台はチケットが手に入りにくいようですが、機会があればぜひ
見に行きたいと思います。
担当 I.K